長谷川翔亮さん
宮城県で起業した先輩起業家を紹介するコーナー「私がココで起業したワケ」。
第14弾は、女川町で地域おこし協力隊として活動する長谷川翔亮さんにインタビューをいたしました。
現在取り組まれているトリガイの養殖や、女川町に出会った経緯、今後の展望についてお話しを伺いました。

長谷川さんの簡単な自己紹介と、起業を志した理由や想いを教えていただけますか。

出身は千葉県千葉市です。大学時代に環境問題を学ぶ中で、「環境にどうアプローチしていくか」を考えていました。その過程で、貝、特に二枚貝に関心を持つようになったことが、今の活動の原点です。
世界的なスタートアップの議論の中では、食料問題の文脈で「動物性たんぱく源を今後どうしていくか」というテーマがあります。その中で、ひとつの答えとして「貝」があるのではないか、と考えるようになりました。
数ある貝の中でも、成長が早いトリガイに注目しました。しかし調べていくと、トリガイは養殖がほとんど行われていません。その理由が「種苗生産(貝の赤ちゃんをつくる技術)」にあることを知り、そこからトリガイの種苗生産の研究に取り組むようになりました。

現在取り組まれている事業について教えてください。

現在は、トリガイの種苗生産の研究に取り組んでいます。この1年で、技術としては確立できた段階に来ています。ただ、事業としてはまだ道半ばで、黒字化に向けた技術開発を、地域おこし協力隊としての活動時間を使いながら進めている状況です。

種苗生産では、卵からたくさんの稚貝が生まれますが、そのうち実際に出荷できるレベルまで育つのは、現状で1%未満です。
事業化を考える上では、生残率を4%程度まで引き上げる必要があります。
いまは、この「1%未満をどう4%まで持っていくか」という点について、育成方法や環境条件を試行錯誤している段階です。
トリガイに限らず、二枚貝の種苗を研究・生産・販売する民間企業は日本では非常に少なく、多くの場合は行政が担ってきた分野です。ホタテ貝のように全国で養殖されている例もありますが、そこまでスケールの大きいことを、あえて民間でスタートさせています。

女川町で起業しようと決めた理由を教えてください。

もともと東北地方に特別な縁があったわけではありません。トリガイの種苗生産をやろうと決めてから、どこで取り組むのが最適かを探す期間が半年ほどありました。
熊本、鹿児島、石川、気仙沼など、さまざまな地域を実際に訪ねました。その中で、情報として「三陸海岸沿いがトリガイの生育に適している」ということを知り、使える施設があるか、サポートしてくれる方がいるかを探しながら場所を絞っていきました。
そうした中で巡り合わせがあったのが女川町です。条件だけでなく、人や支援体制との相性も含めて、ここで挑戦しようと決めました。
2025年7月からは、地域おこし協力隊として女川町に着任しています。


起業して良かったこと、大変だったことがあれば教えていただけますか。

よかったことは、自分のやりたいことを周囲に話すと、本当にいろいろな方がサポートしてくれたことです。土地柄もあるかもしれませんが、「こういうことをやりたい」という明確な意志を持って伝えることで、「自分はこういうことができるよ」と前向きに関わってくれる方が増えました。
そうした支えがあったからこそ、1年で技術確立までたどり着けたと思っています。ミッションを言葉にして伝えることの大切さを、強く実感しました。

一方で大変なのは、経理や書類申請、人事労務といった庶務面です。起業家というと、事業やミッションが注目されがちですが、実際には細かな数字や手続きへの対応が欠かせません。現在は社員はいませんが、専門の方に任せられる部分は任せながら、研究と事業に集中していきたいと考えています。

今後の展望について教えてください。

短期的な目標としては、地域おこし協力隊の期間内に、事業として黒字化することです。現実的なビジネスとして成立させることを目指しています。
もうひとつ、より長期的な展望としては、種苗生産技術を活かした品種改良にも取り組んでいきたいと考えています。成長の早い個体同士を掛け合わせることで、さらに生産性の高いトリガイをつくることができるようになれば、他の地域や海外でも養殖が可能になるはずです。
また、女川町内ではすでに数カ所で試験的な養殖が始まっています。これをどう販売につなげ、漁師のみなさんの利益につなげていくか。町や地域全体の視点で、女川・石巻の新しいブランドづくりにも関わっていけたらと思っています。


これから起業を検討している方に向けて、何か一言お願いします。

明確なミッションやゴールを持って地域に入り込んでいくと、サポートしてくれる方は本当にたくさん現れます。
最初は信じられないかもしれませんが、実際にそうなります。
自分のやりたいことをしっかり決めて、それを言葉にして、どんどん外に伝えていく。
そうすることで、応援してくれる人と出会えると思います。
お話を伺いながら、何度も数字の話に立ち戻っていたのが印象的でした。
1%という現実を前にしながらも、目を逸らさずに方法を探し続ける。
その姿勢こそが、研究を「事業」として地域に根づかせていくための強さなのだと感じました。
長谷川さんの活動報告(女川町地域おこし協力隊note)
https://note.com/onagawa_blog/n/nab43cf06c423
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